江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

学ぶ環境を作り出すこと。

Posted on | 9月 14, 2013 | 学ぶ環境を作り出すこと。 はコメントを受け付けていません。

今朝、札幌国際短編映画祭の教育フォーラムに顔を出しました。今回特に強く思ったのは映像教育ではなくむしろ英語教育について。今回事例発表のなかで、国際的な取り組みの報告が2つありました。一つは、今一緒にコトニで映画を作っている中高生が、先日韓国ソウルで行なわれた国際青少年映画祭の参加について。もう一つは、島田英二監督が北海道情報大学で行なっているタイの大学とのワークショップについてです。

software downloads

ソウルで行なわれたワークショップの模様を見させてもらって、終ったあとにも参加した二人に少し話を聞きました。世界から集まった子どもたちに通訳がべた付きだったのは日本から行った二人だけ。これは二人の問題ではなく、日本の英語教育の問題をよく物語っていると感じました。二人のうち一人は、北海道で一位二位を争う進学校で学んでいますが、もっと勉強しようと思っても、今の学校で学んでいる方法ではダメだと思ったようで、全く通用しなかったことを強く感じたようです。一方タイとのワークショップもやり取りは英語がほとんどですが、日本側の英語力のほうが苦戦していそうなニュアンスを受けました。

感想としては、自分が約20年前に感じた日本の学校教育のなかでの英語教育の問題点について、20年経った今もほとんど改善されていないということ。そして映画というワークショップの目的があって、そのワークショップをするツールとして英語を使わないといけない状況こそがポイントですから、何か取り組むために英語が必須だという環境を作り出すことのほうが、今の英語教育の方法よりもより一層意味のあることだと改めて強く考えさせられました。

日本の英語教育は未だに受験のための英語ですから、こういったワークショップなどでいざ使うという状況に放り込まれたりすると、世界で通用しないということを見せつけられたということになります。「グローバル人材の育成」という大きな目標を掲げはじめた日本の学校教育で乗り越えるべき縮図が、今日の教育フォーラムで強く印象に残りましたが、本来は映像教育のことを考える場でしたので、そのあたりは少しもったいない感じがしました。

高校の講演会でお話をする前後のデザイン

Posted on | 6月 5, 2013 | 高校の講演会でお話をする前後のデザイン はコメントを受け付けていません。

昨日、ある高校でゲスト講師を依頼されて講演をしました。いつもはカタリ場を通した関わり方がほとんどの高校生と、面と向かって話しをするという機会はこれまでありませんでしたから、違った関わりを持つことの意味はあるだろうと、そんな感覚をもって臨みました。

終ってからまず思ったことは、難しいということと、カタリ場は改めて凄いシステムだと強く感じたことです。難しいという感覚は、カタリ場で行き着ける高校生の変化には到底及ばないという、それを知っているからこそその差感じる難しさであって、もしかすると普段から高校に講演に行っている方からすると普通の状況なのかもしれません。自分の立ち位置からは30〜40名ぐらい聞いていた感じがありました。それはまだいいほう、ともいわれましたが、カタリ場をやってきている立場からすると、それはかなり少ないと感じるのです。

振返ってみると、講演の内容よりもむしろ話しをする場づくりを整えるということだけでも、たくさん感じることがありました。なにより高校側が外部の講師を招いてお話をして頂くといったスタイルを工夫してみることが大切なのかと感じます。

カタリ場の事前の打ち合わせのときに、入場からすべて大学生にお任せ状態にしてほしいといったこちらの要望に、拒絶反応をする先生が時々おります。ゲストがわざわざ遠方からお越しいただくので、生徒は事前に整列をして待ち構え、ゲストを招き入れ先生がゲストを紹介し、そしてお話しをして頂く。お話しを聞いているときは、ゲストの話しに耳を傾けるように説得をする。そういったスタンスが当たり前であり常識なのかと思いますが、逆効果がたくさん生まれているなと感じました。北海道のカタリ場では、このような状況にならないように事前にしっかり打ち合わせをしますが、北海道以外のエリアでは稀に起こっているそうです。この先生たちの外部ゲスト対応の固定化が講演のハードルを高めていると感じたのです。

このカタリ場のスタイルが自分には定着していることもあるでしょう。この形式で紹介された自分はペースを乱してはじめてしまいました。しかもセッティングしていたMacがフリーズしてしまうトラブル、マイクの状況もあまりよくなく声が若干ハウリングしていたこともあり、話しを聞くにはイマイチ環境が整っていない感じでした。初動でうまくいかないとなれば、あとは立て直しを終始気にしながら進めますから、内容が何であれそのパフォーマンスを発揮しないで終ってしまいます。自分自身が高校生に対してはじめてだったこともあり、結果的には消化不良のような感じで終りました。

普通の社会常識としては、ゲストに対する先生の対応は間違っていません。しかしながら、生徒に対して話しをしてもらうという目的と意図、その学校の生徒の気質によっては、工夫をしなければならないでしょう。もちろんゲスト講師によって方法は変わると思いますが、ゲストが話をする前と終ったあとの時間のデザインを今一度検討してみること、この意味は思った以上に大きいと思いました。折角の話しを台無しにするということもあり得ます。

do my essay

今回の最大の反省と収穫は、この視点をしっかり持つべきだったということです。学校側からすると外部の方を招くという頻度は少ないでしょうし、こういった見方や考え方をするゲストも少ないでしょうから、自分のような立場からしっかり助言すべきことだったと思いました。よりそこが明確になったことが大きな収穫と考えています。

北海道で展開するカタリバの特徴

Posted on | 6月 3, 2013 | 北海道で展開するカタリバの特徴 はコメントを受け付けていません。

北海道でカタリバが広まって3年目に突入しました。全国では、関西地区や沖縄などでも着実に広がってきていますが、それぞれの地域事情が異なることもあり、それぞれ特色がでてきている状態になってきています。

北海道ではこれまでに(2013年5月末時点)、12校の学校で実施し23回のカタリ場を行なってきました。これからも実施校が伸びる予定で、各地の高校から連絡が来ています。

北海道のカタリバの特徴は、一つに地方の小さな高校からのニーズが高いことです。一つないし二つしか高校がない地方自治体は、高等教育機関がなく、18歳以上から20歳代前半の人口ががくんと減っています。これは地方自治体の人口ピラミッドを調べてみると一目瞭然で、大半の自治体が同じような現象を抱えています。中高生の生徒さんは、自分よりもちょっと年上の世代と触れ合う機会がありません。そのため、自分の近未来について具体的なイメージをつけにくいことや、きっかけが少ないため、それを一時的にでも補完できる空間としてカタリ場を求めているといったことがあります。もちろん、他の理由で札幌圏内の大きな高校からも注目されはじめていますが、このニーズは首都圏や関西圏とさほど変わらない感じがします。

しかしながら地方展開する上で最大の障害になるのは移動にかかるコストの問題で、広い北海道全域をカバーするにはたいへん困難な土地柄だといえます。移動するにあたる交通費の実費分は、当団体の努力という範囲外になりますし、お金だけでなく時間がかかることも大きなネックになっています。大学生にとっては、早朝から夜遅くまで時間を確保しないと遠征には参加できません。札幌近郊であれば、午前中だけ・午後だけの時間で参加できるのですが、遠方ではそうはいきません。参加学生は、大学の授業のみならず、アルバイトやその他の活動を調整しないと関われないとなってしまいます。さらに、札幌から日帰り圏外である高校の数は、現在91校存在します。この91校を実施するには1泊する必要があり、宿泊費・バスなどのチャーター1日分が増額され、とても小さな地方の高校では出費できない金額に跳ね上がってしまいます。今この対応策を講じるべき試みをスタートしはじめたところです。

maths coursework

そして、この遠征というシステムが他の地域のカタリバとは異なる大きな特徴といえます。カタリバ北海道がカタリ場を開催するその日の行程はだいたい以下のような流れになっています。朝7時から8時半頃に札幌駅に集合。その後移動して11時頃には学校近郊まで到着しお昼ご飯を頂きます。そして学校に入りカタリ場を実施。終了後のミーティングを終えて高校を出発するのがだいたい17時頃です。その後また札幌まで移動するのですが、晩ご飯をどこかでとったり、温泉にいくというオプションもその行き先によって旅程に組み込んだりします。札幌到着は20時から23時頃になります。この行程は、日帰りの修学旅行を実施しているようでたいへん楽しいのですが、回数が多くなってくるとかなり酷な仕事ともいえます。

今後はこの遠征のシステムをどう工面していくか。これがカタリバ北海道の特徴といえますし、今後他県で展開していく大きな実験的試みなのかと思われます。

« go backkeep looking »
  • 最近の投稿

  • カテゴリー