江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

若者と地域を結びつける

Posted on | 5月 6, 2015 | 若者と地域を結びつける はコメントを受け付けていません。

人口減少化対策、少子化対策、過疎や限界集落の問題、若者が少なくなってきたことによる、特に都会から遠くにある自治体はどこも大変な状態で、その対応策がトレンドになってきました。問題の本質から考えて、今回のテーマは長期戦になるのは間違いないでしょうし、一過性のブームで終わらせてはならないものだと考えられます。しかも、元々こうなることがわかっていたのにもかかわらず、ようやく世論に火がついたという、出遅れ感は相当あると思います。

とはいっても、やはり無視はできないですし、諦めてはそれで終わりですから、社会が良くなるためにも、今からでもできることはしっかり考えて手を打っておいた方が良いと思いますし、過去の反省に立ち返って長期的目線で手を打ち始めていくことだと感じます。特効薬はほとんどないでしょうし、地道な活動を精査しながら有効策を打っていくという手堅さは大事なのかもしれません。

北海道のみならず全国の各自治体の人口ピラミッドを見てみますと、18歳以上から22歳ぐらいまでの人口は極端に少ない状態になっています。これは高等教育機関がその地域にないことから自然と若者たちは都会を目指します。そして学生たちの住民票の移転率は確認していないのでなんとも言えませんが、相当数が地元に籍を残しながら札幌等に滞在しているケースが多いので、実数ベースでいくと発表されている統計よりも地域に若者たちがいないと言えると考えられます。よって首都圏や札幌圏にはもっと含み増の若者世代が住んでいると考えられます。

彼らにとって故郷とはお墓参りや正月に帰るもので、就職先や将来住むべき土地ではないと考えているのが大半です。札幌やより魅力ある東京等への意識がいっているのが現状ですから、それは昔も今も変わりません。充実した学生生活を札幌圏や首都圏で過ごせば、それだけ心は離れていく可能性が増えていくものです。地元に仕事があれば帰りたいという若者がいることはいますが、それほど多くはないでしょうし、動機としては両親がいるからといったように内向的で消極的な意見で、地域に戻れたとしても、その地域を活性化させることができる活躍を望むには、やや苦しいかもしれません。もちろん時々熱い思いを持って変わり者のように地元に戻る人や田舎に移り住む人もいなくはありませんが、それは今必要とされるぐらいの人の動きが出ているわけではありません。

とはいっても、高等教育機関をその地域に誘致すべきかというとそういったことにはならないでしょう。もはや高等教育機関は減らすべきものになりはじめていますから、大学や専門学校を新たに誘致するのは大きなコストもかかるでしょうし、得策ではありません。

各地の自治体では、この18歳以上から20歳代前半の学生たち世代との関わり方を検討すべきだと思います。彼らと接することで、UターンIターンJターンの可能性を作るのに経験の蓄積やきっかけが生まれる可能性があります。何よりその地域に若者がいませんので、霞が関や都道府県から各自治体に人口減少化対策の話が参り込んでも、対象となるべき人とのコミュニケーション経験が圧倒的に少ないため、対応の仕方が思いつかないわけです。関わりを持ち続ける仕組みを作ることからはじめないとなりません。

一般的に若者や外者がその地域に訪れる装置は、観光だと考えられます。観光することでその地域に触れるという機会がありますし、今は体験型観光が各地で出来始めていますので、もう少し深いコミュニケーション機会が生まれ、それは一つきっかけになると考えられるでしょう。そのほかには、部活やサークルなどの合宿スタイルで地方を訪れることです。これも多くの若者が地方に行くきっかけにはなります。

もう少し深い関わり方といえば、大学のゼミ活動があります。ゼミの教員の研究テーマが地方にあれば、頻繁に学生を引き連れて出入りすることが挙げられますし、この場合は地域の人とのふれあいが観光や合宿のレベルよりもかなり深くなってきます。

ほかにも、カタリバ北海道の活動は、札幌圏という高等教育機関が密集している地域の若者たちを、他の地方にいっとき送り届け高校で授業を行うという活動が内在化されている特徴があります。これも地元の高校生や中学生とのふれあいというものがありますので、少し深いコミュニケーション段階を作れます。

似たような取り組みとしては、よさこいチームを地域のお祭りに招聘して踊ってもらうことで、地域とふれあうこともよく話しに聞きます。北海道大学の“縁”は道内外各地に週末興行のように出向きます。または議員インターンシップを取り組んでいるドットジェーピーの活動も、地方の議会議員にインターンシップすることで、学生たちが地方に関心を持つことが生まれてきているという話も聞きます。

このようにすでに実施されている諸活動をピックアップしながら、人口減少化対策の意味合いを織り交ぜていくことで新たな糸口を模索しはじめていくことからやってみるのはどうかと思うのです。

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