江口 彰 Laboratory

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「カタリ場」という授業を改めて考える(その2)

Posted on | 4月 10, 2015 | 「カタリ場」という授業を改めて考える(その2) はコメントを受け付けていません。

高校生と大学生が語り合う授業「カタリ場」。高校の総合学習の時間の中に組み込まれるため、正規の高校の授業の一環として実施していますが、この授業、高校生に対する教育効果よりもむしろ大学生への教育効果の方がより凄まじいものがあります。高校生は高校3年間に1回程度2時間のカタリ場を受けるのが通常で、効果や目的としては先に述べたように“動機付け”です。しかし大学生はもっと多くの時間を費やすために、その効果が高校生の比ではないといったことになり、それはあまり表に発信できてきていません。

なぜ発信できていないかといいますと、カタリ場の授業は高校側がその授業を取り入れてみようという計画があってはじめて実現するものです。よって高校生に効果的な授業であることが真っ先に検討してもらうべきことになります。また大学生たちも、高校生のためにどういった授業展開をしていけばいいかを第一に考え、カタリ場で高校生達とのやりとりを考えていきます。マスコミの捉え方もどこの高校で実施してどう効果的だったのかを追いかけていくスタイルになります。

このような背景がありますので、見学いただく方々には高校生の変化を観察しに来くるのですが、そのうち見学者のなかに大学生たちの活躍ぶりに目が止まりはじめていく人が増えてきます。カタリ場の授業のなかに組み込まれている“先輩の話”の時間帯に、彼ら大学生のプレゼンテーションを聞くと感銘を受ける見学者も少なくありません。どうしてあのような話ができるのか?不思議に思う人も多くいます。

大学生の教育効果は、実施している大学生たちの実感が伴っていることでもあり、それがやりがいであり活動してみたいというモチベーションになっていることは確かです。見学していただいた多くの方から「なぜ大学生たちはボランティアなのにこんなに多く集まっているのですか?」という不思議に思って質問してきますが、その返答に「口コミです」といいます。ですが、これでは回答になっていませんので、それは“魅力がある”から口コミで集まってくるわけで、その魅力を説明しないとなりません。

大学生たちから見える“カタリ場の魅力”つまり活動動機とは、大きく2つあると考えています。一つは、自分が高校時代にカタリ場を受けたかったという類です。それほど授業についての価値を認め、広めたい、自分の母校でやってみたいという思いを持っている学生がかなり多くいます。もう一つは、様々な学生などが集まっているコミュニティに関わりたいという、仲間づくりや大学生たち同士に対する魅力です。

しかし設立当初は無名に等しいですから、勧誘しても学生たちが集まりにくく苦労していました。今は母体数がそれなりの数になっていますので、口コミで集まってきますし、カタリ場を経験した学生がいますので、体験に基づいて説明しやすい環境にはなりつつあります。また一部の大学の先生からも評価されはじめていますので、そういったルートから伝わることも出てきました。しかし口コミで広まっているといっても限界がありますし、魅力付けもより効果的なものを目指すべきだと考えています。

そのための対策や手法は各地域でカタリバを繰り広げている運営母体が考えてやっていくのですが、北海道も独自のスタイルを作り上げてきてきました。そして学生が集まってきているその組織力は、同じカタリバを展開している全国の仲間たちからも注目されつつあるようです。

カタリバ北海道の目標は全道のすべての高校にカタリ場を届けることとしています。その計画を作るなかで相当な数の大学生を動員すべきことが少し調べるとわかってきます。推定でおよそ4,000人の大学生コミュニティを作り出し、年間3回平均で参加してもらうことが最終的な到達点になります。北海道内にはおよそ8万人の大学生がいますから、かなりの割合です。ですから、口コミ力強化のための魅力づけと、口コミだけに頼らない方法と同時にシステムとして構築し整えていく必要を感じています。そのなかで最も注目して力を入れてきたのが「研修システム」の開発と運営でした。次は、この仕組みについて書いてみたいと思います。

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