江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

「カタリバ」の凄さが分かってくる。

Posted on | 3月 14, 2012 | 「カタリバ」の凄さが分かってくる。 はコメントを受け付けていません。

ずいぶんと久しぶりのBLOG記事を書いています。前回の書き込みから「カタリバ北海道」の取り組みが活発化し、大通高校の夜間部・長万部高校・岩内高校・札幌月寒高校と実施してきました。各地の地方紙面で取り上げられ、NHK北海道さんにはニュースで特集を組んでいただき、北海道でも着実に浸透しつつあります。明日(3/15)には、旭川東栄高校、来週(3/22)は上士幌高校と続きます。カタリバの数をこなすと、様々な視点でこの教育カリキュラムの完成度の高さや可能性を感じることが多く、様々なことを整理しつつ考える視点が多様であることが分かってきます。

実施校が増えてくると、高校による校風の違いがかなりあることや、地域による違いも大きく、高校教育と一括りで考えるべきではないことがだんだん分かってきました。また、進路指導として実施したい高校とメンタルケアの類い(保健体育)の時間として実施したい場合と、大きく二つのパターンがあることも分かってきました。その実施意図から教師サイドの求めてくる要望も変わってくることが分かってきました。

一方で、高校生との対話を通じて学校によって意識や興味関心についての違いも、経験的に分かりはじめています。最も意外だったのは札幌月寒高校企画です。はじめての進学校企画とあって、それなりにうまくいくだろうと思って臨みましたが、予想とは裏腹にたいへん難しい現場でした。学生チームのそのほとんどは進学校出身の大学生です。そのため高校生の立場を理解して臨めると思っていましたが、思うように展開しませんでした。それはなぜなのか。そしてそれを乗り越えるために事前研修など我々の取り組む内容をどのようにすべきなのか、今その議論が学生間で起こりはじめています。

大学生への教育効果も徐々に見えてきました。特にサンプリングに関わることが非常に大きな変化をもたらすことが見えてきます。カタリバ実施中にサンプリングの効果が高校生に対してあるという実感を持つ大学生が多くいますが、それは大学生にとっても大きなものだと言えます。開発に伴う作業の過程では、学生仲間とともに自分の過去をさらけ出すことことからはじまるため、自己を見つめ直し客観的視点を浴びながら何度もブラシュアップしていくことになります。それはまさに自己の再発見や自己内省に繋がり、徐々に自分に自信を持ちはじめる、もしくは自己変革を起こすきっかけが生まれてきます。またサンプリング開発途中段階で、研修の場において多くの大学生の前でプレ発表する機会を設けます。この場において人の前でプレゼンする度胸を作ること、さらなる視点を浴びることが、成長を加速させていくことにもなります。

傾聴した学生への影響も大きいものがあります。共感すること、自己と仲間の比較から自己変化を呼び込む内発的な動機付けを植え付ける効果がどうもありそうです。そのなかからサンプリング開発に志願する学生も生まれてきます。活動への態度が変化する人もいます。開発する側にまわるとスパイラル的にその効果が高まりはじめることもありました。もちろんすべての学生がうまくいくわけではありませんが、開発に失敗したとしても成長を垣間みることができます。リトライがいつでも可能であることもポイントのひとつだと言えます。

運営面で関わる学生の成長や気づきの状態は、他の学生団体と同じようなことがいえ、インターンシップ等の効果と比較的似ている部分もあります。しかしながら、カタリバの内容そのものである“サンプリング”や“チェッキング”の精度を上げることへの行為が、今まさにこれからの時代に必要とされる能力に直結しているものと重複していることが多く、そのため他の活動を凌駕しているポイントなのだと思います。これらは二重の意味が重なりあってそれは何倍にもなっているような感じがします。

全く違った視点で見ることもできます。例えば、大都市以外の地方地域に対して、カタリバが貢献する可能性を持っているかもしれない、そのことに気がつきはじめました。限界集落の最終防波堤は地域の学校の存続がポイントになります。高校がなくなる地域は、限界集落に一歩近づきます。若者がいないところに未来はありません。大学がなく高校しかない状態である地域に大学生が赴く意味は大きいものと感じました。

また我々カタリバの学生団体は、授業終了後にその地域で食事をしたり温泉に入ったりとレクレーションの時間を設けます。これは時間的にも夕食や昼食時になることから、ちょっとした旅行気分を感じてもらう演出を施すことで、授業の実施も含めてトータル的にまた参加したいという気持ちを引き出すことや、リラックスした状態で振り返りをさらに促進させる効果を考えて行なっています。そのとき地域に落ちるお金もメンバー数が多きければちょっとした経済効果もあり、さらに地元民とのコミュニケーションが備わると、一時の精神的な活力が生み出されることも分かって来ました。これはゆうばり映画祭のボランティア効果と似たようなものを感じます。その地域で大学生とふれあう機会がほとんどないでしょうし、大学生にとっても地方の生活に近づく体験がそれほど多くないため、地方情勢についての気づきの場にもなっているというプラスαがあるようです。まだ具体的な地域との交流の仕組みができているわけではありませんが、その可能性を感じるちょっとした機会に遭遇することがあります。

実施する前と実施してみて気がつくこと、それも複数回重ねることで見えてくること、カタリバに隠されている効果は思った以上に大きなものかもしれません。

※「サンプリング」とは、カタリバの授業のなかで実施される一つのコーナーで、大学生が自分の体験談を物語風に語る行為。多くの大学生は、スケッチブックを持って紙芝居風に語る。

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※「チェッキング」とは、授業のスタート時に行なうコミュニケーションを円滑に行なうためのイントロダクションのコミュニケーション行為。グループワークをしやすい状態に持ち込むコミュニケーションの時間帯のことを特に言う。

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