江口 彰 Laboratory

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大学生は研修を受けてから「カタリバ」に参加

Posted on | 10月 17, 2011 | 大学生は研修を受けてから「カタリバ」に参加 はコメントを受け付けていません。

2011年10月13日市立札幌大通高校で「カタリバ」が実施されました。北海道で本格的な「カタリバ」が開催されるのは初となります。同年3月に旭川東栄高校で行なわれた北海道初の「カタリバ」は、本家NPOカタリバと我々が立ち上げたNPO法人CAN(カタリバ北海道)との恊働開催で、実質色々と本家から指南を受けて参加した状態でした。今回は、自分たちだけで企画運営した最初の事例になります。本家同様に、我々も学生に対して研修を実施し、かなりの時間準備を重ねて約100分の授業を生徒に向けて運営しています。その学習効果や準備の中身について、見学しているだけでは分かりにくいものですから、解説をしておきたいと思います。

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著書『「カタリバ」という授業』にも掲載されていますが、高校の実施授業時間の中身の構成は、会場となる体育館の入場から退場までを一つのカリキュラムとして3つの段階を踏みます。「前半のチェッキング」→「中盤のサンプリング」→「まとめの座談会から退場」です。研修で最も力を入れるのは「チェッキング」と呼ばれる、はじめて出会って打ち解けるまでの時間帯におけるコミュニケーショントレーニングです。日常でもビジネスの世界でも初対面の人と出会った時、自己紹介してさぁ会話を始めてください、という流れというのは、実際の場面でなかなかスムーズに起こりえません。そこをしっかりデザインし、イメージを作ったり、コミュニケーションの工夫など練習を重ねて身につけていきます。

人との対話のなかで会話が途切れる気まずそうな間が流れる経験をよくしてきていると思います。様々なタイプの人がいるように、初対面が得意な人もいるでしょうが人見知りの人もいるでしょう。そういった初対面と人と向き合うこと、しかも短時間で対象は高校生となる、このシミュレーショントレーニングが本番で最初の時間に会話をスムーズにさせる確率を上げていくことになります。最初でしくじるとその後の会話が弾むことがなくなり、授業の効果がかなりなくなってしまうことになります。ですから、この最初の段階のトレーニングを最重要視しているわけです。

またもう一つ大事なこととして、単なるコミュニケーショントレーニングだけではありません。集計分析班の学生スタッフが、実施校に事前のアンケート調査や先生とのヒアリングを行い、実施校のイメージを参加学生にプレゼンテーションをします。そこで実施校の想定イメージを作り上げることや共有することを計っていきます。ここで大事なことは、過去の経験した学校との比較から来るイメージです。今回大通高校の実施には、旭川東栄組が10名ほど参加していました。よって、このディスカッションの中心は彼ら経験者組で、東栄高校の経験を踏まえた意見や想像するイメージを語っていきます。それを今回初参加の学生はその議論を聞くことから、自分が現場でどう応対すべきか、イメージを膨らませ仲間と共有させていくわけです。これは回数を重ねれば多角的にイメージを膨らませることが出来ます。次回行なわれる長万部高校(2011.11.1実施)の研修会では、旭川東栄高校と大通高校が比較対象校になり議論はより多角化するでしょう。これが経験継承に繋がり、より高度なイメージがされることになります。

このディスカッションでの共有イメージが、先ほど述べたシミュレーショントレーニングで活きていくことになります。仮想高校生役を演じる側と担うべき学生側とが一つのグループになり、お互い役柄を交換しあいながら、はじめて出会った想定でどんどんトレーニングをこなしていくわけです。そしてこのトレーニングと“振り返り”といわれる、そのトレーニングのやりとりの中身を徹底的に検証する自由対話をセットで行なっていきます。この繰り返しと本番での実践経験が、カタリバに参加する学生の成長機会にもなり、高校生にきっかけを与える大きなエッセンスを生み出していることになるのです。

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