江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

学生の質は下がっているのだろうか?

Posted on | 5月 19, 2011 | 学生の質は下がっているのだろうか? はコメントを受け付けていません。

現在、北海道大学短編映画第3弾(北大オムニバス四部作)のプリプロダクション真っ最中です。今回も北大生を中心に学生が集まり、プロの監督・美術・衣装・コーディネーターと共にクランクインまでの準備を重ねてきています。脚本も決まり、本格的な準備段階になりはじめ来月下旬には撮影に入ります。この度は、株式会社ニトリさんからも特別協賛を頂くことになり、前作よりもより注目度の高いなかで製作が進んでいくことになります。作品詳細は、もうしばらくあとに公開されることになっていますので、公開準備も含めて学生の働きに期待しつつ、一緒に試行錯誤して積み上げているところです。

さて、前作から約1年半ぶりの撮影に入りますが、今回の学生スタッフは一新され、過去の作品制作に関わったことのない新人さんばかりです。経験がないためでしょうか、コミュニケーションに伴う問題が多発しはじめてきました。

創造性に富む映画制作の現場のなかで、複数名が関わり組織的に作品を生み出していくわけですが、そのトップに立つのは映画監督です。すべては映画監督に情報を上げて判断します。映画監督はプロデューサーに渡された条件範囲のなかで意思決定をしていくわけですが、この体制を理解していないのでしょうか、あやふやな状態になり、組織内のコンセンサスがとりにくい状態が生まれてきました。映画監督から、何を託され準備しているのか。そのあたり、任されている範囲を理解しないで場当たり的な動きが頻繁に起こりはじめています。

例えば、脚本からロケ地を確定する際に、ロケ地の決定確認など監督と打ち合わせることを行ないますが、それよりも先に、ロケ地の撮影許認可を催促するようなメールが突如として出回ってきます。まだその場で撮影するかどうか、監督も知られていない情報が確定したかのように情報が回ってくるとチームの中で混乱が生じます。他には、映画に出演してくれる人を探すために学内で色々な人に会っていくのですが、日本人はシャイですから、アプローチを間違うと出てくれる人も出てくれないとなります。よって説明の手順や方法を考えて進めるべきですが、唐突に「映画に出てほしい」と伝えようとする場面にも出会います。

このように組織内でどれくらいの自由度と決定権があるのか、相手がどういった印象を持つのか、イメージできない子たちが増えてきたように感じています。そして、こうしたコミュニケーションによるミスを少なくするための動きというのも、なかなか自発的に起きてきません。相談や連絡や報告が圧倒的に少ないので、こちらから歩み寄って確認するべきことが多くなってきます。先日も、過去何作も学生と映像制作を経験してきている仲間とのやりとりのなかで「学生に対してこういったストレスを感じるのは、はじめてのケース」という言葉が印象的でした。組織で何かを成し遂げるためには、どういったコミュニケーションが必要なのか、そこを学習されないで、大学生になってきたと考えられます。

他の学生団体でも似たような現象がポツポツ現れているようです。先月の新一年生向けのイベント時期でも、仲間と一緒になって新入生の出会いを作り上げていく過程の苦労を聞きました。その学生によると、企画運営するチームメイトが連絡しても連絡をしてくれなく、誰が何をどうやって役割分担されているのかも分からず、指示系統がバラバラで、最初から自分がすべてやらせてもらう立場だったらもっとスムーズだった、とストレスを感じていたようです。仲間で目標を掲げてそれをスムーズに進めてことを成し遂げる、その過程を作り出せない学生や、仲間の活動に貢献しない学生が増えてきました。こうした学生に対して、もし自分が企業の採用面接官だったら採用する?と聞くと「今就職難とか言っていますけど、私たちのレベルがそもそも低いのですね。」という言葉が現状を素直に表していると思います。これが北海道大学という日本のなかでもトップレベルの学内で起こっている現象で蔓延しているとなると、日本の将来にとって危ない兆しであるようでなりません。

確かに昔も今もこうしたコミュニケーションべたな学生は存在しました。私の経験では、遭遇率が高くなってきたという危機感があります。さらに、これらの学生が同世代や先輩後輩等のコミュニティのなかで育まれていくケースが多かったように思います。しかし、そうしたコミュニティも昔より雰囲気が変わってきてしまい、ゆるいと感じてきました。

love essays

今、こうした状況のなかで何を支援すべきで、どういった学習機会を生み出し、経験を通じた成長を促していけばよいのでしょうか。彼らの子どもの頃から大学生までの家庭や地域、学校環境も変わってきていることと、今回のケースとの因果関係は分かりませんが、現場感覚では相当影響を受けているだろうと考えさせられています。

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