江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

職業観や勤労意識を育成すべきなのか?

Posted on | 9月 12, 2010 | 職業観や勤労意識を育成すべきなのか? はコメントを受け付けていません。

只今、キャリア教育なるもののテキスト(北海道版)を作ることになり「キャリア教育とは?」というものに向き合っています。まとまった量の執筆は修論以来なので久々なのですが、集めてきた資料に「若者の勤労意欲や職業観の育成が緊急の課題」と書かれていました。政府のキャリア教育を推進する何らかの文章でよくお目にかかる言葉なのですが、この言葉にはいつも違和感を覚えます。それは、なぜなのか考えてみたいと思います。

仕事について、子どもの目線からは以下の2つのことが考えられると思います。1つは仕事というものが変わってきてよくわからなくなってきたこと。もう1つは、大人世界や社会に対する不信感があるのではないかということです。

人間の歴史から自明のように生きるための活動は時代と共に様変わりしてきました。狩猟から農耕にかわる過程で、生きるためのノウハウは狩人としてのスキルから作物を育てるノウハウへ移行します。産業革命からは工業化が進み、様々な仕事が生まれました。少し昔までは、子どもにとってまだ分かりやすい職業や職種が多くありました。パン屋、花屋、八百屋、魚屋、運転手、銀行員、看護婦、スチュワーデスetc…しかし最近よく分からない仕事が多くなってきています。コンサルタント、広告代理店、証券マン、SE、カウンセラーetc…子ども以前に、大人でも友人知人の仕事内容が分からない事は珍しいことではない世界になりました。それだけ産業が高度化と専門化され複雑化した成熟した社会になってしまったことがいえると思います。ですから子どもは仕事というものがピーンとこなくなったわけです。

もう一方、社会に信用がなくなってきたことについては最近よくいわれていることです。数々の事件が起こり、犯罪が多発化複雑化し、テロの問題から貧困問題など社会問題が充満していることを見せつけられている子どもは、大人になりたくないと思ってしまいます。さらに、子どもからみて輝く大人に出会った経験も少なくなってきていると考えられるでしょう。時代が安定しリスクをとらなくなった親世代を見て、子どもは夢を語り立ち向っている大人に出会う機会がどれくらいあるのでしょうか。

このように考えると「若者の勤労意欲や職業観の育成が緊急の課題」というのが、ちょっとズレていると感じてしまうのです。

上記の問題を解決するためには、次の手法を検討するとよいと思います。1つは、近現代史中心の社会科カリキュラムに再構築することです。例えば、縄文時代から平安・鎌倉・室町時代などの昔話はさらっとやってしまい、明治維新前後あたりから詳しく学ぶことへ変更します。これでかなり学ぶ時間を確保でき、社会人へ直結する知識を多く得ることができるでしょう。次に考えられるのはメディア教育です。「悪いニュースばかりなぜ報道されるのか?」を考えてみたり、いいニュースも探すとけっこうあるという気づきや、編集や演出などにより意味やイメージが変わることを学ぶ機会があれば、メディアを客観的に受け止め、考えることができるようになるでしょう。3つに夢のある面白い大人の人に出会って話しを聴いたり触れる機会を提供することです。これは現在実施中のキャリア教育の流れで問題なさそうですが、外部の人脈を学校が持っていないという課題は大きいようです。

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このようにこの3つを組み合わせて行なうことで、かなり変わると考えられます。特に小中学校などまだ社会に出るまでリアリティのない世代に対するキャリア教育はほとんど必要性がなく、以上の3つをしっかり行なうことで自然と身につけるべきことが備わっていくでしょう。ただしモラトリアム化の問題について、高校から大学生の一部で深刻なことは事実だと思いますし、このことへの対応方法は、別に違う方策を考え実施しなければならないと思います。これはまた機会を改めて考えてみたいと思います。

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