「就活」倫理憲章に意味があるのか?
Posted on | 1月 9, 2011 | 「就活」倫理憲章に意味があるのか? はコメントを受け付けていません。
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このほど経団連が発表したところによると、会社説明会など企業による学生への「広報活動」の開始時期を3年生の12月1日以降とし「面接」などは最終学年の4月以降という方針を固めた、とあります。これまでは3年生の10月から広報活動開始、面接は年明けぐらいから徐々に起こってきます。厳密には、リクナビなどの就職支援WEBサイトが3年生の6月ぐらいにオープンしています。ですから3年生になったらすぐにスタートといってもよい状態でした。大学で学ぶという意味が希薄化していると言われる所以です。
さて今回の倫理憲章はどれくらい守られるのでしょうか。私が思うに実質的な効力はないと見ています。それはグローバル化によるところがもっとも大きな理由だと考えます。もはや新卒採用は国内の大卒生にこだわる必要性が無くなってきました。多くの企業は、日本の学生より外国の特にアジアの優秀な人材に目を付けはじめています。上海や北京などで就活イベントが行われ、そこで確保ができれば日本での採用はそのあとでもよい、と考えているでしょう。経団連の倫理憲章は国外に対しては適用されないでしょうし、海外の就活イベントは日本以外の企業も多数参加するでしょうから、効力を発揮しない場になります。企業は、日本の大学生に対して質的疑問を多く持ちはじめているということでもあります。
今後ローコストキャリア(LCC)の発達に伴い、日本の一部の学生が海外の就活イベントに出かけていくかもしれません。ソウル、上海、香港あたりにはお手軽な就活格安パッケージなども出てくると思います。
皮肉な結末になるかもしれませんが、就活がアジアの諸国に移行するということは、国内の若者にとってますますチャンスが無くなることを意味しますから、国益として考えると衰退していくことが考えられます。既に、国家という枠組みで考えること自体も時代遅れになりつつあるのかもしれません。
企業側の視点は、国益よりも自社が国際競争に打ち勝つために多種多様な優秀な人材確保に真剣に取り組むべきで、そうでなければなりません。日本は人口減少社会ですから、ますます外のマーケットに開かれていなければビジネスとしての発展的展開はできない時代です。そうなると、ビジネスの質も変化し新卒に求めるものも変化してくるでしょう。単なる優秀かどうかだけでもなく、外国人採用の背景には、日本の企業の海外進出における多国籍化に伴うものでもあります。言葉の壁だけではなく各国や地方の文化などの背景も含めて現地採用者の方がより効果を出していくでしょう。
確かなことは、今回の倫理憲章で大学生が「ほっと一息つく」といった状態になるわけではないということです。新卒として求められる人間性や能力が減ることを意味しているわけではありません。このような時代の変化に敏感であれば、学ぶべきことが増えてきていることには変わりはないのです。