江口 彰 Laboratory

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大学生と映画を作る(ケータリング編)

Posted on | 11月 16, 2010 | 大学生と映画を作る(ケータリング編) はコメントを受け付けていません。

昨日、北海道情報大学にて「メディアデザイン論」の授業の一コマを任されました。「映画をプロデュースする」という視点で話してほしい。そのようなオファーを頂いて野幌(北海道江別市)まで足を運んでいます。

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自分は、はじめての大学でお話をする時に、それぞれの大学の文化が違うためにアプローチをたいへん気にするタイプです。いつもそこを難しく感じています。そこで最初はオーソドックスに自分の紹介を兼ねつつ、色々なことに着手した経験からプロデュースという思考パターンに至った経緯を何となくでもいいから感じてほしいと話をし始めていきました。しかしどうもリアリティがないようで、だんだんつらくなりつつありました。しかも映像系の学科にも関わらず、意外と作家さんや役者さんを知らない。色々な人物を上げてもあまり反応がありません。世代間ギャップかと思いました。

そのようななかで、映像を作る現場でのお金の使い方に話が移り変わった時、反応がよくなりはじめました。ロケ現場では、交通にかかる移動費と食費が時間とともにどんどん無くなっていきます。ロケの最前線にいる監督や役者、カメラマンの場所とは少し離れたところで、何が行なわれているか。その話に興味を持ちはじめました。

映画のロケ現場では何十人という人が動きます。『零下15度の手紙』ではエキストラ待機なども含めると、一時的に100名以上の人が映像を撮るために何らかの動きを行ないます。そこでお弁当を出す出さないやメニューの話をしました。例えば、50名にお弁当を出すという展開があった場合、一人500円のお弁当にペットボトルをつけると一食3万円になります。これを3食揃えると9万円になります。珈琲や茶菓子などを用意すると合計で10万円ぐらい1日でかかることになります。5日間ロケすると食費だけで50万円になります。そこで、食費担当のケータリング班が少し工夫をしはじめます。100円安い弁当を探し工面するだけで1食5,000円の節約になります。1日15,000円、5日で75,000円の節約になります。ちょっとした判断で制作費に大きく影響を与えることが分かってきます。大きな制作チームはプロデューサーの元にラインプロデューサーが立ち、その下にケータリング部門の担当者がつきます。小さな映画チームだとプロデューサーが全てを兼ねて行なうことになります。この予算の判断など細かなところでのお金の使い方の工夫が大切なことだという話をしました。

『零下15度の手紙』の現場ではカレーライスにカツを入れるかどうかの判断をしたケースを紹介しました。早朝から深夜までのたいへんな作業のなかで“肉”を補給するかどうかの判断です。現場では自分とケータリング班とで議論して決めました。金銭面と全体の士気や体力を考慮してカツカレーにした話には、反応よく学生が聞いてくれました。倹約するだけではなく、ちょっとした奮発する時もある、その判断を毎回している立場だということを少しは感じてくれたと思います。これらの小さな動きの積み重ねが、作品のクオリティに影響するということを気がつけると、いい作品を作るという意味を違った側面で感じてくれるのではないでしょうか。

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