江口 彰 Laboratory

分野は、“教育” “映画” “まちづくり”。次世代への取組みを分かりやすく考えてみる。

大学生と映画を作る(プリプロダクション編)

Posted on | 10月 3, 2010 | 大学生と映画を作る(プリプロダクション編) はコメントを受け付けていません。

今回、新作の映画『零下15度の手紙』がまもなく北海道大学で上映されます。映画と申しても劇場公開用のような大それたものではなく、地域映画や短編映画、または教育のための映画というくくりで一般的にはなじみのない分野かもしれません。とはいいましても数百万円は使った立派なものです。2008年製作した『銀杏の樹の下で』は世界の7カ国の映画祭で上映されました。今回完成する作品もこれから様々な映画祭にエントリーをしはじめます。どんな結果になるのか、楽しみにしたいと思います。

さて、私のプロデュース作品は若手人材育成の一環で行なわれており、多くの大学生が関わって創作活動をしています。その中身を少し解説したいと思います。映画制作は、プリプロダクションといわれるロケの仕込み準備段階、プロダクションとよばれる通称ロケ、そして編集等の作業があるポストプロダクションに分かれます。今回はプリプロダクションについて書きます。

まず、脚本開発が先行して行なわれます。この脚本に大学生が加わることもありますが、いい本にならないといい作品にならないため、現在はほぼプロや経験者のリーダーシップを優先させて作っています。脚本開発がある程度目処が立ちますと様々な仕事がスタートします。資金を集める動き、役者周りの動き、ロケ地周りの動き、美術系の動き、技術系の動き、この5つカテゴリーに分業します。

まずはお金が必要ですので、それを集めるための営業を行ないます。頭を振り絞ってお金を捻出する方法を編み出し、資金を作っていきます。脚本があるとその脚本を説得材料に企業から協賛をもらったりもできます。営業チームががんばらないと製作チームが動けませんので、脚本の動きの次に重要な動きになります。そして、脚本から役者の人数や役柄が分かりますので、キャストを探し決定する作業から、衣装やメイク・ヘアスタイルの打ち合わせ、演技指導、撮影中の役者周りのことを担うグループを作ります。また、どういった場所で撮影すべきかも脚本から分かりますので、それにふさわしいロケ地を探します。ロケ地選定は、ただたんにふさわしい場所を探すだけではなく、ロケ隊の移動や撮影時の滞在も考慮してリサーチし準備をします。またロケでない場合はセット撮影になりますので、美術系に委ねるなどもします。美術系の動きは、脚本から必要な大道具小道具、セットが必要な場合はセットを作ります。そして、技術内容は資金にもよりますが、カメラや照明、音響機材のレベルやクオリティの検討、音楽製作やCGなどの特殊効果なども決めていきます。

ある程度のクオリティを目指すとその専門的なスッタッフが関わってきます。カメラマンや照明さん、録音技師、作曲家などです。そういった方々に加わってもらいながら作品のクオリティを一歩一歩上げていきます。そのプロスタッフの方々が仕事をしやすいような環境整備が学生スタッフの動いていくタスクになります。会議をセッティングしたり、演技指導の場所を確保したり、仕事の進行がスムーズになるような仕事が主に動くところです。

学生はまだ技術や能力など専門的なスキルや経験がありませんから、そのアシスタントに専念してもらうことになります。現在は、脚本・監督・撮影・照明・録音についてはプロスタッフを配置しています。そしてやや規模が大きくなると、衣装、メイク、スチルあたりに専門的な人を入れていきます。それぞれ専門スタッフは個人で仕事をしますので、監督を頂点とするチームに持っていくのが学生の仕事の大きな役割になります。これは相当なコミュニケーション能力が必要であり、見て分かるように成長が伺えます。

このようにプロの仕事を横で見つつ、多くの経験をしながら、ロケ当日を迎えることになります。

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